2008年09月30日

ある病棟の一日【その1】

掃除のおっちゃんは中日の和田に似ていた。
彼はいつも急いで、必死の形相で仕事をしていた。迫力があった。

病床の上ではストレスが溜まっていたため、俺はたいてい激しいロックナンバーを聴いていた。
ビートルズでいえば、バースデイ、へルター・スケルター、ヘイ・ブルドッグ、カム・トゥゲザー、バック・イン・ザ・USSRなどを好んで聴いていた。

ある日、ベッドに腰掛けてエアドラムに興じていたとき、突然、和田がカーテンを開けて入ってきた。掃除のおっちゃんだった。ヘッドホンからは大音量のミッシェルガン・エレファントが流れていたため、おっちゃんの「失礼しまーす」が聞こえなかったのだ。


俺は即座にエアドラムを止め、平静を装った。
おっちゃんは普段どおり、必死の形相で床を掃除した。
沈黙の時間が続いた。


おっちゃんの額に汗が輝いていた。
俺はおっちゃんの掃除が捗るよう、足を上げた。
沈黙の時間は暫く続いた。


おっちゃんは何事もなかったかのように、別のベッドに移動した。

俺はカーテンを閉め、音楽の世界に戻ったが、何となくエアドラムを再開したい気分にならなかった。そのため、気分転換をしようと松葉杖をついて廊下に出た。

廊下には、額に汗して働く和田がいた。
彼の額は血管が浮き出ていた。

ё
posted by ё ddie at 23:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | ある病棟の一日
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